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東京高等裁判所 平成5年(ネ)3376号 判決

控訴人兼被控訴人(原告)

長谷川清

ほか一名

控訴人兼被控訴人(被告)

細谷泰三

主文

一  本件各控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。

二  第一審被告は、第一審原告長谷川清に対し金一三〇三万七五五九円、第一審原告長谷川正枝に対し金一一四六万二五五九円及び右各金員に対する平成二年五月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  第一審原告らのその余の各請求を棄却する。

四  訴訟費用は、第一、二審を通じて五分し、その二を第一審被告の負担とし、その余を第一審原告らの負担とする。

五  この判決は第一審原告ら勝訴の部分に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

(第一審原告らの控訴)

一  控訴の趣旨

1 原判決を次のとおり変更する。

2 第一審被告は、第一審原告長谷川清に対し金四〇五四万四二一六円、第一審原告長谷川正枝に対し金二七九一万三六一九円及び右各金員に対する平成二年五月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。(第一審原告長谷川清は、当審において右のとおり請求の減縮をした。)

3 訴訟費用は第一、二審とも第一審被告の負担とする。

4 仮執行の宣言

二  控訴の趣旨に対する答弁

本件各控訴を棄却する。

(第一審被告の控訴)

一  控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。

2 第一審被告は、第一審原告長谷川清に対し金一〇二五万九五〇七円、第一審原告長谷川正枝に対し金八七一万六五一八円及び右各金員に対する平成二年五月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3 第一審原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

二  控訴の趣旨に対する答弁

本件控訴を棄却する。

第二当事者の主張

当事者の主張は、次のとおり訂正、付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。

一  原判決六枚目裏二、三行目の「四〇五四万六二一六円」を「四〇五四万四二一六円」と改める。

二  第一審原告ら

1  本件事故現場付近には、当時、第一審被告の進路前方約三八メートルの地点に駐車中の車両がありさらにその前方に幌つき大型トラツクが駐車していて前方と左方の見通しが極めて困難な状況を作つていたのであるから、第一審被告は、いつでも加害車を停止できる状態で走行すべきであつたのに、漫然と時速約五〇キロメートルの速度で進行したもので、運転者としての安全運転配慮義務に違反している。したがつて、被害者の過失割合は、一五パーセントよりもさらに軽微なものである。

2  逸失利益の算定における中間利息の控除は、公平妥当を旨とすべきであつて、ライプニツツ方式ではなく新ホフマン方式により計算すべきである。

3  第一審原告らが本件事故によつて愛娘を失つた悲しみと苦痛は、極めて深いものであるから、その慰謝料額を一審判決の金額にさらに加算するのが相当である。

三  第一審被告

1  被害者は、短大を卒業した後に稼働できるのであるから、その逸失利益の算定においては、稼働可能期間を二〇歳から六七歳までの四七年間とすべきであるし、またその生活費控除は四〇パーセントとするのが相当である。したがつて、被害者の逸失利益は、三一三四万八六五八円(計算式;三〇五万一〇〇〇円×(一-〇・四)×(一八・〇七七一-〇・九五二三)〕とすべきである。

2  右逸失利益の減額を考慮すると、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は、第一審原告長谷川清につき九三万七四七八円、第一審原告長谷川正枝につき六六万九四八九円が相当である。

第三証拠

証拠関係は、原審記録中の証拠に関する目録記載のとおりであるから、ここに引用する。

理由

一  当裁判所は、第一審原告らの本訴各請求は、第一審被告に対し、第一審原告長谷川清が一三〇三万七五五九円及びこれに対する平成二年五月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員、第一審原告長谷川正枝が一一四六万二五五九円及びこれに対する右同日から支払済みまで右同率の割合による金員の各支払を求める限度において正当としてこれを認容し、その余はいずれも失当としてこれを棄却すべきものと判断するが、その理由は、次のとおり訂正、付加するほか、原判決の理由説示(原判決八枚目裏一〇行目から同一四枚目表二行目まで)と同一であるからこれをここに引用する。

1  原判決九枚目表四行目の「三八六〇万七二六二円」を「三六五七万三四三五円」と、同一〇行目の「六七歳までの四八年間」を「卒業後の二〇歳から六七歳までの四七年間」と、同九枚目裏一行目の「生活費」から同三行目の「控除して」までを「生活費は全期間について収入の三〇パーセントを必要とし、年五分の割合による中間利息の控除はライプニツツ方式によるのが相当であると認められるから、これらを基礎として」と、同四行目の「三八六〇万七二六二円(円未満切捨て)となる。」を「三六五七万三四三五円〔計算式;三〇五万一〇〇〇円×(一-〇・三)×(一八・〇七七一-〇・九五二三)=三六五七万三四三五円(円未満切捨て、以下同じ。)〕となる。」とそれぞれ改め、同四行目の次に行を改めて次のとおり加える。

「なお、第一審原告らは、中間利息の控除方法について、ホフマン方式を採るべきである旨主張するが、本件においては、前記のとおり、被害者が稼働可能な四七年間の長期にわたつて、二〇歳当時の平均収入ではなく全年齢の平均収入(年収額三〇五万一〇〇〇円)を得ることができたものと推認したことなどとの関係上、右控除方法としてライプニツツ方式を採用するのがより合理的であると認められる。また第一審被告は、被害者の生活費の控除は四〇パーセントとすべきである旨主張するが、被害者の性別、収入額等の本件に表れた諸般の事情を考慮すると、その稼働可能期間全体について三〇パーセントと認めるのが相当である。」

2  同一〇枚目表末行の「被害者に」を「被害者の」と、同一〇枚目裏五行目、同七行目、同九行目及び同一一行目の各「三五〇万円」を「四〇〇万円」とそれぞれ改める。

3  同一一枚目表四行目の「請求額」を「損害額」と、同四、五行目の「原告長谷川清は二九三〇万三六三一円、原告長谷川正枝は二七八〇万三六三一円」を「第一審原告長谷川清は二八七八万六七一七円、第一審原告長谷川正枝は二七二八万六七一七円」と改める。

4  同一三枚目表六行目の次に行を改めて「なお、第一審原告らが当審で主張するような本件事故における加害者の過失内容、特に加害者が制限速度を時速約一〇キロメートルも超過し道路中央線上を走行して被害者を跳ね飛ばしたことなど被害者に有利な事情を十分に斟酌してみても、過失割合についての右判断を動かすことはできない。」を加える。

5  同一三枚目表八行目の「各請求額」を「の各損害額」と、同八行目の「原告長谷川清」から同一〇行目の末尾までを「その各損害額は、第一審原告長谷川清が二四四六万八七〇九円、第一審原告長谷川正枝が二三一九万三七〇九円となる。」とそれぞれ改める。

6  同一三枚目裏八行目の次に行を改めて「なお、当審において、前記のとおり被害者の逸失利益と第一審原告らの各慰藉料の額を変更し、結局第一審原告らの各損害合計額は減少することとなるが、これによつても、右弁護士費用の額を減額するのは相当でない。」を加える。

7  同一四枚目表二行目の次に行を改めて「そうすると、第一審被告は、本件事故による損害賠償として、第一審原告長谷川清に対し一三〇三万七五五九円及びこれに対する右事故の日である平成二年五月三〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金、第一審原告長谷川正枝に対し一一四六万二五五九円及びこれに対する右同日から支払済みまで右同率の割合による遅延損害金をそれぞれ支払うべき義務がある。」を加える。

二  よつて、本件各控訴は一部理由があるから原判決を変更し、訴訟費用の負担について民事訴訟法九六条、八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言について同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 丹宗朝子 新村正人 市川頼明)

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